職人技とセンスに魅了され
はらこ飯の発祥地、亘理に本店を構える『 わたり あら浜 』さんの仙台本町店を訪れた。カウンターの奥から親方の明るい笑顔が出迎えてくれる。現在、仙台本町店は夜のみの営業で予約のお客様限定なのだが、瞬く間に満席となった。お座敷は掘りごたつで、これは長居してしまいそうだと心のなかでつぶやく。手書きのメニューに見入っていると、さっそくお通し「 寿司屋のポテトサラダ 」が目の前に現れた。一口食べてわたしはすっかり心を奪われた。震えるほどに旨い。ポテトサラダの上には、煮卵の天ぷらが乗っていて、ゴボウの素揚げが散りばめられている。さっぱり味の秘密は寿司酢だそう。どうりでまろやかな酸味なわけだ。煮卵のほんのりした甘さとゴボウのサクサク感と香ばしい香り。やられた!
笑顔が素敵な親方
お通しの寿司屋のポテトサラダ
目でも楽しめる毛ガニと赤ナマコ
次に運ばれてきた料理には思わずため息が漏れる。「 毛ガニほぐし身ハーフ(1,890円) 」と「 赤ナマコ酢(680円) 」が一枚の皿にまるで絵画のようにセンス良く盛り付けられているではないか。「 毛ガニに亘理のいちごソースをつけて召し上がってみてください! 」口いっぱいにいちごの良い香りが広がって一気に春の味に変化する。なんと面白い発想なのだと驚きを隠せない。赤ナマコのコリッという歯ごたえも申し分なく、コリッの後のとろっと溶けるような柔らかい食感もまたたまらない。
鮮度抜群の美しい刺盛
美味しい料理にお酒がぐいぐい進む。合わせるお酒で料理の味がまるで違って感じられるのはとても不思議だ。食中酒として「花ノ文」をいただく。これもまた刺身の旨さをぐいんと押し上げてくれる。「 おまかせ刺盛一人前(2,100円~) 」の美しさたるや、お皿を一周させて動画に収めたくなるほどだ。
立体的に盛られた刺身にお魚の活きの良さを感じる。その中でひと際目立っているのは、つやのある濃い赤色の赤貝で、それはもう見事としか言いようがない。赤貝ってこんなに大きいのか!肉厚な身だからこその歯ごたえと甘みを存分に感じ、ベストオブ赤貝!と褒め称える。のどぐろは皮をさっと炙ってあり、その香ばしさと濃厚な旨みに思わず唸る。大トロのとろりとした脂もまた抜群!これも素材の良さと鮮度、そして目利きの確かさがなせる技であろう。
「 クジラうねすベーコン(1,280円) 」はキレイな淡いピンク色。ごま油の風味が利いていて、マスタードのまろやかな酸味は脂の乗っているクジラと相性がいい。「 活〆穴子白焼(1,280円) 」は柚子胡椒の上品な香りでさらに美味しさが増す。どの料理も食材を美味しく食べるための工夫が施されており、今までとはちょっと違った味を楽しめるのも魅力のひとつなのである。
クジラのベーコン
活〆穴子白焼
季節を味わう旬の食材
「 旬の天ぷら盛(1,680円) 」はほっき貝、カキ、たけのこ、ふきのとう、めんたいこ、こごみ、ぎょうざにんにく、たらのめ、のバラエティに富んだ8種。あらかじめ塩が軽くまぶしてある程度なので、ほぼ素材の味のみ。どれも香り豊かで、これぞ本物の味。中でも、ふきのとうのほろ苦さやシャキシャキのたけのこが春の訪れを感じさせてくれる。天ぷらの薄い衣の中に香りと風味がぎゅっと閉じ込められていて、季節感をたっぷり味わえる素晴らしい逸品である。
漁師さんが命がけでとってきた魚、農家さんが必死で作った作物、その想いに付加価値を付けてお客様に提供している『 わたり あら浜 』さん。味はもちろん、雰囲気、接客も心地良いのは、そういった気持ちがにじみ出ているのに他ならない。「 自分の心が料理に必ずあらわれる 」と社長は語る。あら浜さんの料理にはとげが無くあたたかい温もりを感じた。人が集まるやさしい『 わたり あら浜 』さんはこれからさらなるご縁を紡ぎ、ますます地元の人々に愛され続けるお店になるだろう。
■SHOP DATA
【店名】旬魚・鮨の店 あら浜
【営業時間】
亘理店:ランチ 11:00~14:00
ディナー 17:00~20:00
本町店:※完全予約制(火~木・日・祝日)
■ディナー 17:00~21:00(L.O.20:30)
金・土・祝前日
■ディナー 17:30~22:00(L.O.21:00)
【定休日】
亘理店:月曜日
本町店:月曜日、年末年始
【TEL】
亘理店:0223-35-2585
本町店:022-263-0840
【住所】
亘理店:亘理郡亘理町荒浜字中野183番地8
本町店:仙台市青葉区本町1−10−15斉藤ビル1階